野草とともに

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ひとりしずか Chloranthus japonicus センリョウ科 Chloranthaceae

ひとりしずか Chloranthus japonicus センリョウ科 Chloranthaceae この草のひとりしずかという名前を聞けば, たいていの人は, 何処かの山林にひっそり とひとり咲いている姿を連想する。 それに, この名前は響きもよくて私の非常に好きな 名前である。
しかし調べてみると,この名前 のしずかは江戸時代の中期に出された「和 漢三才図会」に,その由来が書かれていて 源義経の愛妾静御前のことであることがわ かる。
そしてこの植物と同属のふたりしずか も「和漢三才図会」中に,その由来が書かれ ていて静御前とその幽霊の二人が舞う姿にたとえてふたりしずかと命名したとある。 いずれにしてもしずかは静御前のことである。 ひとりというのは,ひとりしずかが普通,ただ 一本の花穂を立てるのに対して , ふたりは たいてい二本の花穂を立てているのに対応 している。
それでも静御前には多くの人が同 情,共感をもっているので,これでよしとして いるのかもしれない。

私は野生のひとりしずかを今から40年も前に,ただ一度だけ見たことがある。
当時は野草にそんなに興味も持っていなかったので,記録 も何も残っていないが,春に四国の石槌山に登ったことがある。
その時, 麓に近い中腹の山林内 にひとりしずかが群れをなして生えているのに出会ったが,この叢りようは,とてもひとりしずかとい う雰囲気ではなかったことを思い出す。 
このスケッチしたものは清荒神(宝塚市)の参道の山草店 で1989年3月21日購入したものであるが, 一本の茎の花穂につくひとりしずかの花は純白で,気品 があり,とても好もしいものであったが,その根の附近から,次々と叢生してくる様子も示していて, 前に書いたような状況になることを示唆している。
ひとりしずかという名前は,それ自体,とてもよい名前なのだが,実際にひとりしずかを知ってい る人にとっては,いささかのミスマッチが感じられるのではなかろうか
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