野草とともに

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あおまむしぐさ Arisaema serratum サトイモ科 Araceae

あおまむしぐさ Arisaema serratum サトイモ科 Araceae 本スケッチは,私のメモによると1988年5月8日から数日かかって画いている。
あおまむしぐさには青蝮草の漢字が当てられているが,蝮は日本では最もよく知られた毒蛇で,この草の仏炎苞が,蝮が鎌首をもたげた姿をイメージし,また,蝮が蝮酒のように強壮剤として使われていることも勘案されて命名されたと考えられる。仏炎苞は肉穂花序をつつむ大型の総苞が仏像の後にある仏炎に似ていることから名付けられた。
属名のArisaemaはテンナンショウ属のことで,種小名のserratus(serratum)は,この葉が鋸歯をもっていることを示している。テンナンショウは天南星と書かれ,中国で,漢方に実際使用されている数種の本属の植物の総称として使われている。
私がこの植物をあおまむしぐさに同定するのに難しい問題があった。当初,私はまむしぐさ(A. serratum)の仏炎苞の外側が暗紫色で白線のあることを知っていたので,仏炎苞の外側が緑色で白線のあるこの植物を,簡単にあおまむしぐさとしたのである。ところがこの属に仏炎苞の外側が淡緑色から緑色のあおてんなんしょう(A. tosaense)があることを知り,ひょっとしたら,これかも知れないと心配になってきた。そこで手元にある図鑑類などを片っ端から調べなおして,ようやく次の2点から,私のスケッチした草があおまむしぐさでよかったという結論に達した。即ち,あおてんなんしょうならば①仏炎苞の先が糸状となって非常に長い(時には30cmに達する)し,②茎の色は淡緑色のことが多いということである。テンナンショウ属の植物の分類,同定は難しいといわれているが,それには仏炎苞を観察することが非常に重要であることがわかる。
なお,あおまむしぐさはまむしぐさと同じ学名を有していて,その球茎は,漢方薬として,去痰,鎮痙に用いられている。
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