野草とともに

野草とともに
野草の一覧へ

あいさつ

これで私の“野草とともに”のシリーズを終わらせていただきます。1993年の本誌の第38巻3号に「にしきごろも」から始めて12年余りの長期にわたり連載させていただき有難うございました。

そもそもの始まりは当時,神戸女子薬科大学図書館の足立利枝さんと摂南大学薬学部図書館の勘川捷治郎さんが,私が植物図を画きためているのを知っておられて,随筆風の文章を書いてくれないかと依頼され,私は「自信がないがやってみましょう」と引き受けました。そして何とか書き始めましたが,このお二人は野草の探訪にもしばしば御一緒してくださいまして,折りにふれて励ましてくださいました。どうも有難うございました。

また,プロの写真家の松岡慶一さんは,私の野草の先生で,色んな野草の自生地や,野草のことを教えていただき,このことがなかったならば,私はこんなに長期間書き続けることはできなかったでしょう。残念ながら一昨年に亡くなられましたが,心からのお礼と,御冥福をお祈り申しあげます。

こうして出発したのですが,しばらくして,植物のリンネによる二名式学名(属名,種小名)の重要性に気付き,あの阪神大震災の1週間前の1995年の1 月10日からラテン語の勉強を始めました。この年になってラテン語をやり出したのは“野草とともに”の執筆のお蔭だと思っています。今でもラテン語の勉強を続けていますが,私の余生の精神生活の中心となっています。

このようにして文章の骨組みを構築することができて,この仕事も続けることができたと思っています。

このように,ある仕事は,一人の力だけではなく,皆さんに助けられてこそなし得るのだと,ようやく,この年になってわかるようになりました。この長いシリーズを終わるに当たって感慨なきにしもあらずですが,大過なく,このシリーズを終えることができたことを感謝しています。

末筆になりましたが編集部の方々にも色々とお世話になり有難うございました。

平成十七年九月十日
高尾 楢雄