野草とともに
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おけら Atracylodes japonica キク科 Compositae
![おけら Atracylodes japonica キク科 Compositae](/images/yasou/y011.jpg)
“山でうまいのはおけらにととき”と俚謡 でうたわれているがとときはキキョウ科のつ りがねにんじん(Adenophora triphylla var. japonica)であることは,かなり以前から知 っていた。
しかし,おけらのほうは,それが キク科に属することは知っていたが,どのよ うな植物であるおか,さっぱり分からなかっ。
いっときテレビのコマーシャルソングに “おけら何故泣くあんよが寒い”と歌われて いたが,このコオロギ科の昆虫と何か関係で もあるのか,などとも思いながら,山歩きな どでもずいぶん気をつけていたが,とんと出 会うこともなかった。
ところが“灯台下暗し” とでもいうのか,ある人から“薬大の薬草園 に植わっています”と教えられ,丁度花期に 画いたのがこのスケッチ(1989年7月2 0日)である。
これでも分かるが,総苞下の 2列に並ぶ,魚骨状の苞葉があり,その頭花 の様子が面白いので,ドライフラワーにして楽しむ人もあるという。私はまだ試してみ たことはないが,4,5月頃の若芽が,とく に美味であるとされている。おけらはこのようにうまい山草であるだけではなく,薬用植物としても使われていて,この根を洗って,そのまま乾燥したものが蒼朮,皮を剥いで乾燥したものが白朮として,芳香性の健胃剤として使われている。また,これを粉にして,山椒,防風,桔梗,蜜柑皮,肉桂皮などに加えて,正月用の屠蘇散にも使われる。
おけらは昔から邪気を払うと信じられ,京都祗園の八坂神社では,大晦日の夜に火をたき,おけらをくべる行事がおこなわれている。
この火を火縄に移して持って帰り,元日のお雑煮をたく種火に用いると,一年間を息災に過ごすことができると信じられ,昔から“おけら参り”として親しまれている。大晦日の夜の町を,火縄をくるくる廻しながら,歩む人々の姿は,本当に京都にふさわしい風物詩として,何時までも続いて欲しいと思うのである。
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